中山 杜人
診断名: 「仮性ダンディ症候」
最近、「ぐらぐらするめまいが続く」とのことで、当院めまい外来を訪れる方が多くなって来ました。
(この症状については、有名な坂田英治名誉教授が世界で初めて発表した症候名なので、インターネットで調べても出ていません)
脳幹上部の中脳あるいは小脳虫部(前庭小脳ともいい、発生学的には内耳と同じなので兄弟の関係)の機能低下と考えられます。
この症状を引き起こす原因疾患としては次の1〜5があります。
- 肩こり、首すじのこり、頸椎症(変形性頸椎症、ストレートネック、後彎、前または後縦靭帯骨化症)から来る椎骨脳底動脈循環不全症
- ①のような頸部の疾患あるいは症状がベースにあり、椎骨脳底動脈系の微妙な血流障害を背景にした中枢性発作性頭位めまい(原因は内耳の三半規管ではなく脳)
- 「良性発作性頭位めまい」として運動療法を過剰に行った場合
- 過去の脳幹(複数個)や小脳の小梗塞が頭部MRIで発見された場合
- まれに脊髄小脳変性症(比較的初期症状として現れることがあります)
- 症状としては、ぐらぐらするめまい、特に頭の中でぐらぐらする、あるいは歩行時とか立つ時にふわっとする、ぐらっとする、寝ている時以外起きている時、場合によっては座っている時などにもぐらぐらするという、いわゆるめまい感が長期に続くことが多いです。しかもなかなか治療に反応しない人が多いので、患者さんもつらいですが、医療サイドも頭を悩ますのです。
- 頭部MRI、MRAを調べても大きな異常は指摘できないことが多いです。
しかし、頭部MRIで異常なければ「その人は異常なし」とするのは早計です。
軽度の微妙な変化は、現在のMR装置で描出するのは困難です。むしろ何も所見がない方が「ああよかった」と安心できるのではないでしょうか。 - 原因が判明して、診断が確定したとしても治療については別問題です。
薬物治療に反応しにくい人が多いので、一筋縄では行かないことが多いです。
【ではどうしたらよいのでしょう】 - 西洋医学的な治療だけでなく、東洋医学的な治療として鍼(当額田記念病院では円皮鍼を使用しています)、マッサージ、さらに、低周波、赤外線のような物理療法も併用し、トータルに治療を行うのが良いと考えています。 ただこうした代替的な治療は、その人に合うかどうか施行してみないと何とも申し上げられないというのが正直なところです。
- 最近の報告で、高齢になると大脳の右半球と左半球の間にある脳梁というところの機能が低下して左右の半球の情報交換がスムーズに行かなくなり、急に立ったり、歩行時のふらつきが出やすいということもいわれています。 現在治療の一環として、人によってはビタミンB3の注射を施行する方もいます。