中山 杜人

良性発作性頭位めまい(2012年 新聞掲載記事から)

 ここに乗せた内容は、2012年4月15日(日曜日)の神奈川新聞を初め、北海道から九州各地の新聞に掲載された記事です。

 寝返りを打ったり、起床の際などに頭の位置を変えたときに起こるめまいは「良性発作性頭位めまい」と診断されることが多い。

この病気は平衡感覚をつかさどる内耳の三半規管の問題が原因で発症することが多いとされ、理学療法や休養により、短期間で比較的治りやすいと考えられている。
「ただ同じめまいも、特に中高年の場合、血管病変をベースに、頸椎の異常や首周辺の筋肉の張りが上乗せされて起こる血管障害が原因になることが少なくない。その場合、脳に関連してくるので注意が必要」と額田記念病院(鎌倉市)の中山杜人医師(内科)は指摘する。
中山さんは、耳鼻科医だったが、内科に移り、横須賀共済病院(横須賀市)では内科で「めまい外来」を解設、以来24年間、数千人のめまい患者を対象にMRI(磁気共鳴画像装置)を使って脳や頸部の血管病変についても調べてきた。 「『めまいは内耳』と言う考え方が一般的だが、もっと広い視点で見ることが大事。めまいと首はかなり関係がある」と中山さん。
「頸椎などに不具合があると、首の筋肉の緊張や頸部交換神経の興奮により、椎骨動脈が締まりやすくなり、脳への血行が不良となる」
設計の仕事でパソコンを長時間使っていた男性(56)のめまいのケースでは、通常後に反っている頸椎が前屈し、異常な状態になっていた。これを無理に自分で治そうと、枕を首の下に当てたため、めまいが出現。
耳鼻咽喉科で良性発作性頭位いめまいと診断され、頭を動かす理学療法を行うと、めまいが悪化。
枕を低くし、頸部の血行をよくする薬だけでなく、鍼、マッサージ療法を併用した結果、めまいが消えたと言う。「長時間パソコン操作やうつむき作業で、同様のめまいを起こす人が最近増えている」
また肥満や喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの危険因子を持つ中高年者や、高齢者がめまいを経験した場合、できればMRIで脳だけでなく、血管の画像も撮り、動脈硬化の進み具合を調べておいた方がいい。
70代の男性の場合、良性発作性頭位めまいと同じ所見だったがMRIにより、左右の内頸動脈とも50%狭窄が見つかるなど、脳と心臓で高度の動脈硬化が進んでいった。
同様に良性発作性頭位めまいと同じ症状の高齢の患者で頭部のMRI撮影により、脳の太い動脈で高度の狭窄が見つかることが時にあると言う。
「これらの血管の病変に首の筋肉の緊張(首のこり)が加われば、血行が悪くなり、脳幹や小脳の機能が障害を受け、めまいが十分に起こり得る」と中山さん。
「高齢やメタボリック症候群の多発を背景に多くの人で動脈硬化が進んでいる。めまいは重大な血管病変が隠れている事があることも知ってほしい」と話している。

神奈川新聞に乗せられた記事

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