食後高血糖でアルツハイマー病のリスクが2倍

水野 治
(みずの おさむ)





2012年6月より
糖尿病外来開設
専門
内科 内分泌
日本内科学会  認定内科医
日本糖尿病学会 専門医
日本内分泌学会 内分泌代謝科(内科)
専門医
日本内分泌学会 内分泌代謝科指導医

▼久山町研究でわかったこと


・久山町研究というと脳卒中をはじめ心臓・血管病の危険因子の解明で有名ですが、なぜ糖尿病なのですか。
・久山町では高血圧管理が徹底し、脳卒中が減ってくると予想しましたが、1980年代半ばから減らなくなりました。
 その背景には肥満、高コレステロール血症、糖尿病の増加がありました。
 1988年の健診から、ブドウ糖負荷試験を行うようになり、60歳以上の住民を血糖値のレベルで分類して、15年間も追跡調査をしてきました。
 その結果、糖尿病はアルツハイマー病のリスクを2.1倍、血管性認知症のリスクを1.8倍上昇させることがわかったのです。
 特に、食後の血糖値が高いとアルツハイマー病も血管性認知症も多くなることがわかりました。
久山町研究
  • 1961年から福岡県久山町の住民を対象に、九州大学医学部が行ってきた調査。
  • 1960年代、日本人の死因第1位は脳卒中で、その脳卒中の実態を知る目的で始まり、以後50年以上にわたり病気の時代的変遷を追跡してきた。
  • 徹底した調査により国際的な評価も高い。
血管性認知症
  • 脳梗塞、脳内出血などをきっかけにして起こる認知症。
 

・通常の健診は空腹時血糖ですから、健診の検査結果がいいからといって安心できないわけですね。
・そうです。ヘモグロビンA1cも認知症発症を予測する指標にはなりませんでした。
・食後の血糖値が高いこととアルツハイマー病の関係は。
  食後の血糖値が高いと、なぜアルツハイマー病が起こりやすいのかについてはまだわかりません。
ただ、食後の血糖値が高い人ほどアルツハイマー病の人の脳の中に見られる老人班が多いことが裏付けられています。
 

高齢者でも糖尿病コントロールは大事!


・高齢な方でも糖尿病コントロールは大事なのですね。
・そうです。
 高齢な方でも血糖コントロール、特に食後の高血糖を抑える治療が認知症を予防する上でもとても重要だと言えます。
 ただ、高齢な方は、食事療法を行ったり、薬をきちんと使用することが難しいことがあります。一人暮らしの高齢者、特に男性の場合。あるいは老夫婦の二人暮らしの場合など、ハードルが高いことがあります。
・そのようなケースではどのように対応していますか?
・訪問看護、ヘルパーさんの手助けなどが考えられますが、まず、病院のケースワーカーなどに相談することが大切になります。そして、何よりきちんと通院を続けていただきことですね。
 私の外来でも、80歳代の女性で表情が乏しく意欲の低下していた方が血糖コントロール改善につれて明るい表情になり、娘さんも驚くほど計算力がよくなった方、糖尿病コントロールとともに機嫌がよくなったと奥様から感謝された70歳代の男性などもおられます。


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・ここに掲載した記事は、2013/2/10 鎌倉生活NO.166に載せられたものです。
・鎌倉生活ホームページ医療と健康「専門医に聞く」にも掲載されています。
(http://www.kamakura-seikatu.com/index.html)