腰部脊柱管狭窄症

漆原 信夫
(うるしばら のぶお)


額田記念病院
(整形外科)

医学博士
日本脊椎脊髄病学会指導医
日本整形外科学会専門医
  運動器リハビリテーション医
  スポーツ医
日本リウマチ学会専門医

▼こんな症状があったらご用心を


 今回は主に「腰部脊柱管狭窄症」の症状についてお話しいたします。読者のみなさんは、あまり聞き覚えのない病名でしょうが、今から申し上げるようなことが過去にありませんでしたか?理解いただきやすいように、その症状を女性の話し言葉で書いてみます。


1, 昔は1キロ、2キロ平気で歩いたわ。でも最近はね、500メートルも歩かないうちに、お尻や脚が痛くなって思わず腰かけてしまうの。5分、10分座って休んでいると、また歩けるようになるのだけれども、歩いているうちにまた同じような痛みが出てくるから癪にさわるのよ。 2, 歩く姿勢が悪くなってきたと注意されることが増えたのよ。スーパーマーケットで20分ぐらい買い物をしているとお尻や脚が痛くなって、カートによりかかってしまうのね。楽だけれど、カッコ悪いわ。
3, 以前は駅まで休まずに歩けたのよ。でも、今では歩くとお尻や脚が痛くなって2回、3回と休まないと駅までたどりつけないの。だから、ついバスに乗ってしまうわ。遠出もいいけど歩くのはおっくうね。 4, 5分も歩かないうちに痛くなるから、外出する時はタクシーを利用するか、家族にクルマで送ってもらうことにしているの。楽だしね。でも家族に頼むのってすごく気を使うでしょ。外出はしたいけれど、ほどほどにしなとね。
5, 以前は外出が好きでよくデパートに買い物にでかけたものよ。でも最近は歩くとすぐお尻や脚が痛くなるから買い物も近くのお店で済ませるの。あ〜、おしゃれがしたいわ。 6, 以前は買い物をしにスーパーマーケットまで、毎日歩いていってたのよ。でも、最近では週に1回程度、それも行きは家族に送ってもらい、帰りはタクシーに乗っちゃうの。歩かなければいけないとわかっているのだけれどね。
7, 外出しなくなつてから久しいわ。最近はもっぱら家の中よ。炊事や洗濯をしたいのに、10分も立っているとお尻や脚が痛くなって、もうそれ以上立っていられないのよ。でも、つらいのを我慢してちゃんとやっているわ。 8, 立っているのがつらいのよ。炊事洗濯は家族まかせ。若い時にはこんなことなかったのに。本当に悔しいわ。
9, トイレまで歩くのがやっと。それ以上歩くとお尻や脚が痛くて。だから、家族に無理言ってトイレに近い部屋に代えてもらったのよ。 10, 仰向けに寝ることすらつらいのよ。横を向いて丸くなって寝ているわ。
 皆さんは似たようなことを過去に経験されませんでしたか?歩いたり立ったりしているうちに、お尻や脚が痛くなったり、つい座ってしまう。こういった症状を「間欠跛行(かんけつはこう)」といいます。そして、その症状も多種多様です。
 「間欠跛行」を引き起こす代表的な病気は、1,血流障害2,腰部脊椎管狭窄症です。血流障害の場合はふくらはぎに痛みが生じることが多いのに対し、腰部脊椎管狭窄症の場合は主にお尻や脚の外側が痛みます。
 両者ともにご高齢の方に多い病気です。両者が合併している場合もあります。糖尿病の方は特に注意が必要です。
間欠跛行のほかに、1,下肢足のしびれ(脚がじんじんする)2,下腿筋力低下(スリッパが脱げやすい)3,膀胱直腸障害(排尿がすっきりしない、尿が残っているような気がして気持ち悪い)といった症状が腰部狭窄症にみられます。
 しかし、なんといっても起立歩行のお尻や脚の痛み(間欠跛行)が初期症状として圧倒的に多いものなのです。年齢のせいだと誤解していらっしゃる方、腰部狭窄症の治療はタイミングが最も大切です。間欠跛行も直りうる症状なのです。自分一人で悩まずに、私どもにご相談下さい。


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